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東京高等裁判所 昭和44年(ネ)1819号 判決

(フランス国ニース市)

控訴人

ミロラド・エス・ミリサブレヴイツツ

右訴訟代理人

鈴木秀雄

被控訴人

住友信託銀行株式会社

右代表者

奥平泉一

右訴訟代理人支配人

野坂礼三

右訴訟代理人

山根篤

外五名

右補助参加人

アビタシオン株式会社

右代表者

矢吹三郎

右訴訟代理人

柳原武男

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は、控訴人の負担とする。

事実

控訴人代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人は控訴人に対し、金二〇、一六〇、六一五円およびこれに対する昭和四二年五月二六日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員の支払をせよ。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決および仮執行の宣言を求め、被控訴代理人は、主文第一項と同旨の判決を求めた。

当事者双方および補助参加人の事実上の主張、証拠関係は、次に付加するほかは、原判決の事実欄に記載のとおりであるから、これを引用する。

補助参加人代理人は、

一、補助参加人は、控訴人に対し、昭和三九年七月八日東京都港区芝高輪南町五三番地所在鉄筋コンクリート造地上七階塔屋三階建アパート型住宅(名称高輸アビタシオン)一棟延坪801・79坪のうち五階G型五〇三号建坪43.35坪、一階ガレージ7.93坪、右建物の共用部分の持分一〇〇〇分の七一および同所宅地204.45坪の一〇〇〇分の七一の持分を代金二八〇〇万円で売却する契約をした。

二、補助参加人は、右売買契約の日である昭和三九年七月八日手付金二〇〇万円と改造工事の内金三〇〇万円を受領し、昭和三九年八月三一日控訴人の代行者である被控訴人から右代金の内金二〇〇〇万円と改造工事引当金一六〇、六一五円を受領した。

三、ところで、昭和三九年八月三一日受領した右金員が本訴で争われている金員であり、もしも被控訴人が敗訴し、これを控訴人に返還すべきことになれば、当然補助参加人は被控訴人から右二〇〇〇万円と改造工事引当金一六〇、六一五円の返還を請求されるおそれがある。

四、補助参加人は、昭和三九年一〇月二六日控訴人に対し、所有権移転登記に必要な書類を交付し、同四〇年九月八日売買目的物件を引き渡し、翌九日控訴人は入居した。

五、補助参加人は、控訴人から、昭和三九年八月三一日金二〇〇〇万円の代金の内金を受領し、金一六〇、六一五円の改造工事引当金の支払を受けたので、改造工事を実施したものであり、またそれ以前に控訴人の指示があつたので、これに基づき改造工事を実施したものである。

六、控訴人は、桑島浩弁護士を代理人として補助参加人に対し、昭和四〇年一月一八日付の「高輪アビタシオンに係る件」と題する内容証明郵便をだしているが、そのなかで右二、〇〇〇万円を補助参加人に支払つたことを認め、利息分の返還を要求している等、右代金の支払があつたことを前提とした記載をしているのであるから、控訴人が、本件送金を補助参加人に支払うよう被控訴人に指図したことがないと主張し、被控訴人に対し右送金にかかる金員の返還を求めるのは、言いがかりといわなければならない。

と陳述した。

〈証拠略〉

理由

一当裁判所は、控訴人の本訴請求は理由がないと判断するが、その理由の詳細は、次に付加訂正するほかは、原判決の理由欄に記載のとおりであるから、これを引用する。

二原判決七枚目表五、六行目の「フアーストナショナル銀行東京支店」とあるを「ファースト・ナショナル・シティ・バンク東京支店」と訂正し、同裏七行目の「各証言」の次に「第二審の証人麻生欣市、品川清の各証言を加え、同八枚目表九行目の「中にも」の前に「、控訴人から補助参加人宛の書簡である甲第一一号証の一、甲第一五ないし第一九号証の各一、二(いずれも成立に争いない)」を加え、同表一〇行目の「他に」の前に「第二審における証人桑島浩の証言、控訴本人尋問(第一、二回)の結果中右認定事実に反する部分は、前記認定に供した各証拠に照らして措信できない。第二審の鑑定人服部洋の鑑定の結果によれば、外国送金を第三者口座へ振り込みたいとの希望が申し出られたときは、いつたん受取人口座に入金したうえ、あらためて受取人から払出請求書と振込依頼書を徴して第三者口座に振り替えるのが建前であることが認められるが、しかし、本件のように送金受取人本人の口頭による指図によつて第三者口座に振り替えることが許されないものではないから、この鑑定結果は、前記認定を左右するものではない。」を加える。

原判決八枚目表一〇行目と一一行目の間に「なお、仮に右指図の事実が認められないとしても、〈証拠〉を総合すれば、控訴人は本件物件に入居した前記昭和四〇年五月(本判決の引用する原判決の確定する事実)(補助参加人が昭和四〇年九月八日と主張しているのは、昭和四〇年五月八日の誤記と認める。)当時においては、控訴人は前記米貨五五、七〇〇ドル相当の日本円が被控訴人から補助参加人に支払われたことを前提として、建物の内部装飾、設備の改善および値引の交渉等をし、支払ずみの代金の利息の返還を求めようとしていたことが認められ、これに反する証拠はない。そうすれば、控訴人はその当時において、右米貨五五、七〇〇ドル相当の日本円が本件物件の売買契約に基づき控訴人が補助参加人に支払うべき代金の内金として、被控訴人から補助参加人に支払われたことを追認したものといわなければならない。従つて、控訴人の本訴請求はこの点からいつても理由がない。」を加える。

三そうすれば、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当で、控訴人の控訴は理由がないから、これを棄却すべきである。そこで、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(満田文彦 鈴木重信 小田原満知子)

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